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邂逅

2009年01月18日

もう、随分と昔のこと。
たしか中学校の頃だったと思う。


クラスに小さくて、運動も勉強もダメなやつがいた。
いつも気怠そうで、授業を聞くでもなく、俯いて本を読んでいた。


そんな彼を、あまり好きでなかった。
だから小馬鹿にした感じで絡むことが、たまにあった。


ある休み時間に、
私は偉そうに「おまえの人生、楽しいのか?」みたいなことを訊いた。


すると彼は怠そうに、渋々と私に言葉を返した。

「おまえにこれやるから」

そして、共にカバンから一冊の本を取り出して放ってよこした。



カバーもなく、表紙もボロボロになった本で、
それは「開口閉口」というタイトルの文庫本だった。


キャッチした本から彼に再び視線を移すと、
彼は既に教室の机に突っ伏しながら読書を再開していた。


私も授業に一所懸命になる質でもなかったので、
次の授業が始まると、机に突っ伏しながら渡された本を読んでみた。


面白かった。
授業とかマンガなんかより、よっぽど面白かった。


彼が授業にもスポーツにも、全く関心を示さない理由が分かった。


こんなに面白い世界が身近にあったなら、
わざわざ面倒くさい外の世界に入り込まなくとも
充分に楽しい人生が送れる。


当時の私にとって活字といえば教科書で、
読書といえば苦痛でしかなかった。

彼の所為で、世界が一変した。


それくらい私の価値観を、世界観を変えた一冊だった。


「開口閉口」 開高健著 新潮文庫


短編エッセーがたくさん入っている本で、
15分もあれば気分転換もできる良書◎

私が本を読むことが好きになったきっかけの本です。
気が向いたらご一読下さい。オススメです。


そういえば持田君は、今どうしてるんだろうか。
もしまた会うことがあれば新しい本をおしえてほしい。  


Posted by CATS HOUSE RECORDS at 00:56Comments(2)ミヤハラコウヘイ